短歌めくり集
しなののうた杉田白百合
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季節の移り変わりを感じながら、あるいは旅行先の風景の向こう側を見つめながら、そしてたどってきた道を思い起こしながら。
信濃の国、善光寺平から、生活感溢れる短歌が続々届きます!
信濃の地を一瞬にして通り過ぎる夏に歌人は何を思うのでしょうか?

雷鳴の轟く窓辺に立ちおれば背を貫きて閃光はしる
「夏を拾う 4」 (2010.9.6)
野辺に咲く名もある花もなき花も賞でゆく人の穏やかに見ゆ
「夏を拾う 3」 (2010.8.24)
雑草の茂れるままの廃屋に天を仰ぎて向日葵の立つ
「夏を拾う 2」 (2010.8.9)
雷鳴の閃光はしる窓にいて悪魔の駆ける天を眺めり
「夏を拾う」 (2010.7.28)
エジプトの絵模様踊るスカーフを透き過ぎゆきぬ葉桜の風
「エジプトに馳せる 2」 (2010.7.15)
ピラミッド謎多ければ惹かれふく馳せる心は早やエジプトへ
「エジプトに馳せる 1」 (2010.6.19)
境内の池面に浮かぶ花筏鯉も見るらし筏揺らす
「初夏に感じる 2」 (2010.6.5)
親が子に譲るを倣い名付けしとゆずり葉という教えられたり
「初夏に感じる 1」 (2010.5.17)
完成は百年後とうガウディの見上げる塔に人影を見ゆ
「スペインの旅 4」 (2010.5.7)
ゴヤ描く「裸のマハ」の前に立ち去り難かりしプラド美術館
「スペインの旅 3」 (2010.5.3)
名画なるベラスケスの絵に立ちん棒駆け足で過ぐプラド美術館
「スペインの旅 2」 (2010.4.23)
スペインは世界遺産の豊庫にて古に馳す宮殿巡り
「スペインの旅 1」 (2010.4.15)
のうのうと足を投げだし野良猫の欠伸に注ぐ日射しのやわし
「しなのの春 2」 (2010.4.7)
春日浴び親子で飛ばす紙飛行機広場に高く声の広がる
「しなのの春 1」 (2010.4.7)
連翹の黄があまりにまぶしくて惑えるわれをさらに惑わす
「春の兆し 2」 (2010.3.19)
雪解けの水が川幅膨らませ目を皿にして渦巻きの過ぐ
「春の兆し 1」 (2010.3.9)
公園に遊ぶは鳩と鴉のみ自由自在に闊歩しており
「立春のころ 2」 (2010.2.19)
立春と聞けばからだが軽くなり日脚も延びて街に向かいぬ
「立春のころ 1」 (2010.2.12)
逆転の笑みのこぼるる浅田真央十九歳の貌のぞかせて
「氷上の舞 2」 (2010.1.31)
製氷のあとに滑れる一本の白き筋あとリンクに光る
「氷上の舞 1」 (2010.1.29)
おみくじが枝垂るるほど結ばれて松の緑に白き花満つ
「元日詠 2」 (2010.1.13)
除夜の鐘遠くに聞きて目覚めれば去年は今年の時を刻めり
「元日詠 1」 (2010.1.10)
華やげる花火のあとの静まりに儚さつのる靴の音聞く
「秋深く 3」 (2009.12.31)
木枯しの吹くにまかせて散る紅葉絵模様のごと地面彩る
「秋深く 2」 (2009.12.27)
夕映えの空に吸い込む童謡の声に連なる柿の木の家
「秋深く 1」 (2009.12.8)
村里のおちこち柿の実たわわ生りふるさと恋し父はは恋し
「虫歌観音 3」 (2009.11.20)
幾年も経しか目鼻の定まらぬ笑める石仏苔生しており
「虫歌観音 2」 (2009.11.12)
信州の松代出身和田英の製糸工女の歩みを覚ゆ
「虫歌観音 1」 (2009.11.6)
森林の雨を集めて十和田湖は水を湛えて奥入瀬くだる
番外編「奥入瀬渓谷 2」 (2009.11.3)
雨上り奥入瀬渓谷歩きなば不意に栃の実頭を打ちし
番外編「奥入瀬渓谷 1」 (2009.10.30)
海鳴りのうねりも聞こゆ枕辺に潮の香りに包まれて寝る
番外編「竜飛岬 2」 (2009.10.24)
函館へ連絡船で渡りたる夢多き日の青春過る
番外編「竜飛岬 1」 (2009.10.22)
世に連れてさま変わりする秋祭り花火ひととき境内賑わす
「秋祭り 2」 (2009.10.20)
肩車される幼のもみじ手が父の背中でぽんぽん跳ねる
「秋祭り 1」 (2009.10.15)
寂れたる町は一夜に膨らみて人人人に埋れ尽くされり
「風の盆 3」 (2009.10.5)
哀調を帯びる越中おわら節風に流るる声の侘しも
「風の盆 2」 (2009.10.1)
坂の町八尾は九月一日を豊作祈る風の盆とう
「風の盆 1」 (2009.9.28)
北上川白波たてて流るるを車窓にながめ花巻へ向く
番外編 北紀行「中尊寺にて 3」 (2009.9.25)
高原のすすきの原を分け入れば女人結界の石碑のありて
「秋の気配 2」 (2009.9.10)
いつの間にセミの声絶えこおろぎの音色に秋の気配漂う
「秋の気配 1」 (2009.9.8)
五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る
磨り減りし丸き石段登りつつ苔生す石に往事を偲ぶ
番外編 北紀行「中尊寺にて 2」 (2009.8.28)
五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る
うす暗き堂塔覆う松杉に霊のおるらし重き風吹く
番外編 北紀行「中尊寺にて 1」 (2009.8.26)
五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る
「ことばなき願い」 (2009.8.19)
上弦の月くっきりと祭りの夜 鉢巻法被が奏でる平和
「しなののいのり」 (2009.8.15)
諍いなどなき世を望み散策す青葉まぶしみ平和を覚ゆ
「なつのさかり」 (2009.8.11)
一山を占めるがごとく春蝉は尽きるを知らず鳴くを競えり
「しなののなつ 3」 (2009.8.7)
太陽と月と地球の織りなせる天体シヨウに言葉を絶す
「日食に立つ」 (2009.8.2)
「しなののなつ 2」 (2009.7.23)
「しなののなつ 1」 (2009.7.16)
番外編「みちのくの旅」 (2009.7.7)
「薔薇 2」(2009.7.1)
「聖山(ひじりやま)高原」(2009.6.28)
「薔薇 1」(2009.6.22)
「五月の頃」(2009.6.14)
「沖縄」(短歌新潮賞受賞作)より(2009.6.16)
「善光寺御開帳」(2009.6.14)
■杉田白百合 sayuri sugita
長野県飯山市生まれ。児童文学、女性史を学ぶ。短歌新潮同人。著書に「なくなったきょうかしょ」(ポプラ社)、「たっちゃんのたからもの」(あすなろ書房)。
短歌めくり集「しなののうた」
