マーク短歌めくり集

しなののうた杉田白百合

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季節の移り変わりを感じながら、あるいは旅行先の風景の向こう側を見つめながら、そしてたどってきた道を思い起こしながら。 信濃の国、善光寺平から、生活感溢れる短歌が続々届きます!

写真は善光寺御開帳2015年(上)と善光寺雲上殿納骨堂(下)

善光寺

善光寺

トルコの旅

中欧の旅(ドナウ川)

善光寺へ続く小径にに躑躅咲き回り道してひととき憩う

「信濃美術館 2」 (2017.6.15)

幾たびも足を運べる信濃美術館 改修聞けば早や半世紀

「信濃美術館 1」 (2017.6.2)

宴過ぎ鎮まり返る城山に手持ち無沙汰のぼんぼり揺るる

「五月晴れ 2」 (2017.5.15)

柔らかな日射し浴びつつ善光寺への参道のぼる今日五月晴れ

「五月晴れ 1」 (2017.5.1)

故郷にいまだ残れる壕ありて怯える日々の蘇りくる/p>

「オスプレイ飛来 2」 (2017.4.14)

静かなる長野の空に轟音を響かせ低くオスプレイ飛ぶ

「オスプレイ飛来 1」 (2017.4.3)

二、三日見ぬ間に薔薇の赤き芽が膨らみ春はしかと近付く

「淡雪 2」 (2017.3.15)

淡雪が薄ら椿の花被いくちびるのごと紅を覗かす

「淡雪 1」 (2017.3.2)

ベランダによく来る鳩の姿なくいずこにいるや大雪のなか

「大雪 2」 (2017.2.15)

一夜にて膝上までの新雪に今朝の景色は墨絵のごとし

「大雪 1」 (2017.2.2)

威勢よき栄太鼓が高鳴りて足止めて聞く大き人の輪

「正月点描 2」 (2017.1.15)

善光寺の石畳踏み手を合わす拝める願い凡が一番

「正月点描 1」 (2017.1.5)

大輪の華の競演闇焦がし際立つ赤に真田丸浮く

「長野えびす講花火 2」 (2016.12.15)

晩秋の夜空彩る大輪はこれぞ花火と陶酔したり

「長野えびす講花火 1」 (2016.12.1)

錦木に混じりて松の際立つも一期に散りゆく落ち葉のロマン

「いく秋 2」 (2016.11.15)

道の辺に賑わいて咲く野紺菊 心の襞を潤しくるる

「いく秋 1」 (2016.11.1)

フィナーレの静かに消える聖火台安堵の旗が大きく揺れる

「リオパラリンピック 2」 (2016.10.15)

車椅子に乗りて聖火を高く上げ選手に拍手喝采の湧く

「リオパラリンピック 1」 (2016.10.1)

庭先で採れたと南瓜じゃが芋を持ちてくる娘(こ)の笑顔のまぶし

「しのび寄る秋 2」 (2016.9.15)

終日を鳴き続けゆく蝉の声 蝉の一生 われの一生

「しのび寄る秋 1」 (2016.9.1)

お台場に自由の女神が建ちていてニューヨークなど脳裡をめぐる

「お台場 2」 (2016.8.15)

その昔ここより砲弾飛び交うか緑が包む砲台の跡

「お台場 1」 (2016.8.1)

亡き兄と蚊帳に放せるホタル追い遊びし昭和遠くになりぬ

「ホタル狩り 2」 (2016.7.19)

わくわくと幼に還りホタル狩り 子らに交じりて闇を急げり

「ホタル狩り 1」 (2016.7.1)

さざ波のごとく揺れる白藤のトンネル抜ければ真っ青な空

「足利の大藤 2」 (2016.6.15)

足利の六百畳なる大藤は空を隠して花房揺るる

「足利の大藤 1」 (2016.6.1)

雪解けの水嵩の増す山峡に黄の耀える山吹の咲く

「春爛漫 2」 (2016.5.15)

祈るがに掌合わす白木蓮ひと日を咲きて散りぎわ見事

「春爛漫 1」 (2016.5.1)

寄り道の湯島天神娘と訪えば香り残して散りゆく梅花

「レオナルドダビンチ展 2」 (2016.4.15)

ダビンチの「糸巻きの聖母」の初来日 再び巡り会えて嬉しき

「レオナルドダビンチ展 1」 (2016.4.1)

ふるさとの飯山映る雪景色に脳裏をめぐる茅葺きの家

「春の気配 2」 (2016.3.15)

残照にくっきり映える槍ヶ岳荘厳なりて襟を正せり

「春の気配 1」 (2016.3.2)

雪被くベランダ越しの菅平 朝日に映えて光を放つ

「大寒 2」 (2016.2.15)

大寒の夜に吹雪が戸をたたき影映るるは雪女めく

「大寒 1」 (2016.2.1)

初詣で善光寺への参道は行き交う人の笑みの花咲く

「新春を詠む 2」 (2016.1.15)

山の端を刻刻染めて初日の出神秘を覚ゆ元旦の朝

「新春を詠む 1」 (2016.1.4)

「鳩ぽっぽ」作詞の歌碑が浅草寺に滝廉太郎と初めて知りぬ

「東京ぶらり旅 2」 (2015.12.15)

画廊にて息子(こ)の発行の原画展 絵に魅せられるフルーツパフェ

「東京ぶらり旅 1」 (2015.12.1)

わが家にも柿の木ありて幼な日に競いて上る故郷遠し

「晩夏 2」 (2015.11.15)

式部の実紫耀う光にてあるを知りたる公園の隅

「晩夏 1」 (2015.11.1)

生きている証しの憂い掠うがに野分きの風が吹き渡りゆく

「戸隠の森 2」 (2015.10.15)

連山を映して澄める鏡池黙して座せば無心になりぬ

「戸隠の森 1」 (2015.10.1)

稲田には雀除けなる網張られ案山子も見えてふるさとを恋う

「秋風 2」 (2015.9.15)

初あきの夜にひんやり秋雨が残暑覚えず猛暑過ぎたり

「秋風 1」 (2015.9.2)

戸隠の山をくだりて山みれば黒雲湧きて雨の降るらし

「戸隠奥社へ 2」 (2015.8.25)

本殿の奥に巨大な岩ありて天の岩戸の神話浮かべり

「戸隠奥社へ 1」 (2015.8.1)

越水の原に結界の石ありて女人らを偲ぶ幾世越せども

「森の美術館 2」 (2015.7.15)

束の間の梅雨晴れ急ぎ戸隠へ開館したる美術館を訪う

「森の美術館 1」 (2015.7.2)

山海の恵み豊かな近江町市場は盛り列をなしたる

「金沢散策 2」 (2015.6.15)

金沢で知人の遺物を展示する泉鏡花の館を訪ねる

「金沢散策 1」 (2015.6.2)

鎮もれるライトアップの善光寺 荘厳なれば浄土の浮かぶ

「善光寺御開帳 2」 (2015.5.14)

時を超え中日庭儀の大法要あの世この世が回りてきたりぬ

「善光寺御開帳 1」 (2015.5.2)

岐阜商に四対一と負けたるも松商ナインに拍手は止まず

「春の甲子園球場 2」 (2015.4.15)

初めての甲子園球場に息をのむ 広いなあと声を発して

「春の甲子園球場 1」 (2015.4.2)

鐘楼の春を告げくる鐘の音が霞のそらに響きわたれり

「善光寺界隈 2」 (2015.3.15)

護摩堂と五色のひもが結ばれる建てしばかりの柱は真っ白

「善光寺界隈 1」 (2015.3.2)

日脚伸びぽかぽか陽気の昼下がり蠅のろのろと床這いめぐる

「春の訪れ 2」 (2015.2.13)

裸木を透かして遥かに槍ヶ岳白刃のごとく煌めきて見ゆ

「春の訪れ 1」 (2015.2.3)

身の生(う)くる幸いあるを第九にてしみじみと聴く気持ち新たに

「第九の響き 2」 (2015.1.15)

年の瀬の慌ただしさを拭うがの心に沁みる第九の響き

「第九の響き 1」 (2015.1.5)

山門をくぐれば石の灯ろうが軒並み倒れ目を覆いたし

「長野北部地震 2」 (2014.12.15)

鐘楼の土台がくずるる善光寺 作業の人の吐く息白し

「長野北部地震 1」 (2014.12.2)

興福寺の阿修羅の像に拝みいて邪心を祓い清みてゆきたり

「京都御所と正倉院展 2」 (2014.11.15)

朝九時に会場に着くも長き列 一時間待ちと正倉院展

「京都御所と正倉院展 1」 (2014.11.5)

たちまちに尾花の波がざわめきて風吹きすさぶ戸隠おろし

「戸隠中社へ 2」 (2014.10.15)

一もとの野菊の咲ける女人堂 戸隠中社の隅に鎮まる

「戸隠中社へ 1」 (2014.10.2)

夏草の繁れるなかに萩の花見え隠れして秋を思わす

「初秋の戸隠牧場 2」 (2014.9.15)

戸隠の牧場を訪えばひひ〜んといななく声に迎えられるる

「初秋の戸隠牧場 1」 (2014.9.2)

役者など集まる場所と伝え聞く下北沢は劇場多し

「新世紀モンスター展 2」 (2014.8.16)

涌き上がる夢を描くかS君の自由自在に筆の羽ばたく

「新世紀モンスター展 1」 (2014.8.2)

箱根路は山また山の重なりて幾山越えて渓わたり行く

「富士山めぐり 2」 (2014.7.24)

一片の雲なき富士を目の前に祈るがごとく娘と仰ぎ見る

「富士山めぐり 1」 (2014.7.4)

後ろ髪引かるる思いで場を去るも思い巡らす巢立ちせる雛

「隼 2」 (2014.6.15)

巢立ちたる雛を見遣るか親鳥は頭上に大きく弧を描き舞う

「隼 1」 (2014.6.2)

瑠璃色の羽を広げて陽を浴びる孔雀ゆるりと我もゆるりと

「春爛漫2」 (2014.5.15)

やわらかに春の雨降るなかに啼くつねにもさわぐ鶯の声

「春爛漫1」 (2014.5.1)

くねくねと曲がる坂道下りきて今年も買いぬ桜団子を

「墓参り 2」 (2014.4.15)

つつがなく四十余年を過ごしきて守りくれしの夫を拝めり

「墓参り 1」 (2014.4.3)

一夜明け腰まで埋む雪ならば外出控えカップラーメン

「大雪 2」 (2014.3.15)

今日よりは雨水というもつるはしの雪を砕ける音高くして

「大雪 1」 (2014.3.4)

武蔵野の多摩のホスピス訪いし日の稜線浮かぶ夕茜雲

「小林登美枝師10回忌 2」 (2014.2.18)

病床に紅ひき笑める登美枝師の面影めぐる今日十回忌

「小林登美枝師10回忌 1」 (2014.2.6)

善光寺に詣でる人の賑わいて拝殿までは分刻みなり

「新春を詠む 2」 (2014.1.14)

うっすらと薄化粧する寒椿 冬木に深紅の花をのぞかす

「新春を詠む 1」 (2014.1.6)

御苑には清正井とう井戸ありてパワー受けりと列に並びぬ

「明治神宮 2」 (2013.12.16)

小春日に明治神宮を訪いたれば吉日なるか人の溢るる

「明治神宮 1」 (2013.12.1)

戸隠の天戸岩屋戸の神話など思いて遊ぶ秋の一日(ひとひ)よ

「戸隠散策 2」 (2013.11.12)

たちまちに露に包まれ戸隠の険山隠せるしのびよる秋

「戸隠散策 1」 (2013.11.1)

木更津の宿より海をながむれば白波たちて幾隻の船

「スカイツリー巡り 2」 (2013.10.14)

複雑な幾何学的な鉄脚のスカイツリーは怪物に見ゆ

「スカイツリー巡り 1」 (2013.10.1)

山風を受けて揺らめく蕎麦の花見渡す限り白き波打つ

「山の風 2」 (2013.9.16)

戸隠の植物園に降りたるはひとりのみにて心細かり

「山の風 1」 (2013.9.1)

戸隠の鬼の伝説数ありて 鬼棲めるがの暗き参道

「戸隠奥社詣で 2」 (2013.8.12)

真向いに戸隠連峰見渡せる女人結界の碑を通り過ぐ

「戸隠奥社詣で 1」 (2013.8.1)

小天狗の森のコースを巡りきて熊出没と聞きて慄く

「飯綱高原に遊ぶ 2」 (2013.7.9)

梅雨晴れの大座法師池に映りたる飯縄山は深く鎮もる来

「飯綱高原に遊ぶ 1」 (2013.7.1)

茂林寺の横を通れば伝えある文福茶釜の噺浮かび来

「薔薇 2」 (2013.6.17)

大輪のベルサイユという薔薇ありてパリを訪う日の宮殿を恋う

「薔薇 1」 (2013.6.4)

先頭を走る川内選手見え ひときわ高く声援の飛ぶ

「長野マラソン 2」 (2013.5.13)

走り寄る弟の手とハイタッチ雪の背を追う長野マラソン

「長野マラソン 1」 (2013.5.2)

大門に繋がる道のひろびろと椅子やテーブル客を待つがに

「善光寺散策 2」 (2013.4.15)

境内のせせらぎ音をたてる辺に春蘭咲きて故郷を恋う

「善光寺散策 1」 (2013.4.6)

啓蟄の声聞きたるか冬の蠅 ガラスの窓をのそのそと這う

「早春 2」 (2013.3.14)

物憂げな朧に映ることどもを春の嵐は連れ去りくれぬ

「早春 1」 (2013.3.7)

冬晴れのひと日布団を干したれば今宵は見むか薔薇色の夢

「大寒 2」 (2013.2.11)

公園の新雪鳴らし踏みゆけば木花の眩し大寒の朝

「大寒 1」 (2013.2.4)

山茶花に匂いなけれど薄らと雪積む紅に心奪わる

「正月三が日 2」 (2013.1.11)

銀嶺を赤く染めつつ初日の出 神神しさに頭の下がる

「正月三が日 1」 (2013.1.7)

黒煙を吐きつつ走るSLに若き日偲ぶ通学列車

「寸又峡と吊り橋 2」 (2012.12.17)

秘境なる寸又峡行くSLの車内で食べるふるさと弁当

「寸又峡と吊り橋 1」 (2012.12.3)

中庭の巨大な南瓜の彫刻に子等戯れてかくれんぼする

「草間彌生展 2」 (2012.11.15)

入り口の草間彌生のヤヨイちゃん 故郷にあり居場所見つくか

「草間彌生展 1」 (2012.11.2)

野良犬が先頭に立ち得得とガイドするがに遺跡をめぐる

「灼熱のトルコ 6」 (2012.10.18)

メルハバはトルコ語でいう今日は 覚えたてしの言葉飛び交う

「灼熱のトルコ 5」 (2012.10.2)

時を越え栄華の遺跡巡りつつオスマントルコの巨大を覚ゆ

「灼熱のトルコ 4」 (2012.9.14)

五十キロ奇岩の続くカッパドキア キリスト教の聖地の聞きぬ

「灼熱のトルコ 3」 (2012.9.3)

ホメロスの叙事に書かるる戦争の巨大な木馬に目を奪われり

「灼熱のトルコ 2」 (2012.8.14)

トルコにて七十六の誕生日 旅の仲間が祝いてくれぬ

「灼熱のトルコ 1」 (2012.8.4)

のんびりと甲羅干しする亀あると眺めるわれも亀のごときか

「地蔵菩薩 2」 (2012.7.13)

善光寺に地震(ちい)の松より作られし菩薩を知りて拝観したり

「地蔵菩薩 1」 (2012.7.3)

太陽が元に戻りて輝きを浴びて恵みの深きを知りぬ

「天体ショー 2」 (2012.6.17)

ひんやりと暗き風受け太陽の欠け始まりてショーの幕開く

「天体ショー 1」 (2012.6.2)

綿帽子かぶるがに咲く白木蓮 夕べ一樹に惹かれ刻過ぐ

「春爛漫 2」 (2012.5.14)

見えねどもひねもす啼ける鶯に解き放たれてひと日過ぎゆく

「春爛漫 1」 (2012.5.1)

本代の借金ばかり背負わされ幼子連れて婚家を追わる

「風よ吹け 2」 (2012.4.13)

さよならと言いたくないと握る手の夫の目かなしわれなお悲し

「風よ吹け 1」 (2012.4.1)

露なる梅の木肌の裂け目より 花を見つけし夫は足止む

「梅咲くころ 2」 (2012.3.14)

友よりの梅の花ある便り読み 夫身罷りし季の浮かぶなり

「梅咲くころ 1」 (2012.3.1)

乱舞する雪の妖精怪しかり われを招きぬ銀色の精

「冬の夜空 2」 (2012.2.18)

大寒の夜空にかがやくオリオン座 際立ち光るを亡夫と定む

「冬の夜空 1」 (2012.2.4)

初詣の帰路に買いくる濁り酒 わが手捻りのぐいのみに満つ

「新年を寿ぐ 2」 (2012.1.19)

脈脈と月日重ねて元旦の輝きを増す山の端見つむ

「新年を寿ぐ 1」 (2012.1.5)

形見なる母の作りし綿入れを初下ろしするわれ七十五

「冬の訪れ 2」 (2011.12.4)

落ち葉焚き焼き芋頬張る子ら見えず ここにもありし原発の影

「冬の訪れ 1」 (2011.12.4)

二十体の聖像ならぶカレル橋 安泰祈り像に触れたり

「中欧五カ国の旅 4」 (2011.11.15)

中世の名残り漂うプラハ城 わが視線射る尖塔五つ

「中欧五カ国の旅 3」 (2011.11.3)

ベルリンの壁もなくなり東西の往来激しトラックを見ゆ

「中欧五カ国の旅 2」 (2011.10.18)

すいすいとドイツとチェコの国境も検閲あるは遥か遥かに

「中欧五カ国の旅 1」 (2011.10.11)

ちりりんと風鈴鳴らす秋の風 鈍き頭に風穴を抜く

「夏の終わり 2」 (2011.9.30)

浅草のほおずき市に出会いたり売り声高く風に乗りくる

缶ビール一本空けて仏前で夫を迎うる今日は盂蘭盆

「夏の終わり 1」 (2011.9.22)

浅草のほおずき市に出会いたり売り声高く風に乗りくる

「東京スカイツリー 2」 (2011.8.31)

競い合い世界一とうスカイツリー霊呼びて哭く声聞こゆるか

「東京スカイツリー 1」 (2011.8.13)

線太き棟方志功の版画絵に般若おもわす像迫りくる

「名画に浸る 2」 (2011.7.27)

モネ描く「積み藁」の絵に導かれ足袋を繕う母浮かびくる

「名画に浸る 1」 (2011.7.15)

ゆうゆうと鴨の番が遊びたる明神池に贅のひととき

「上高地散策 3」 (2011.6.22)

上高地を10キロ歩き待ち受ける白骨の湯に解れゆきたり

「上高地散策 2」 (2011.6.15)

聳え立つ雪渓迫る穂高岳 河童橋にて目を見張るなり

「上高地散策 1」 (2011.6.8)

花を賞で小田原城を埋め尽くす笑顔かがやき声跳ね上がる

「箱根遊山 3」 (2011.5.26)

ほとばしる湧き水ありて掬えれば のどみにしみて身を貫けり

「箱根遊山 2」 (2011.5.11)

幾曲がりスイッチバックを重ねつつ箱根登山の列車に揺るる

「箱根遊山 1」 (2011.5.7)

何一つ予測だにせず襲いきし地震・津波と福島原発

「東北関東大震災 3」 (2011.4.26)

去年訪えし釜石港の無気味なるがれきの山に身の竦みたり

「東北関東大震災 2」 (2011.4.7)

おろおろとただおろおろと10日間 地震はわれを虜にしたり

「東北関東大震災 1」 (2011.4.1)

ちょうちょうと流れる水の軽き音 白波たてて春の声聞く

「春一番 3」 (2011.3.24)

目の前をのそりのそりとゆく猫の移りてくるか我ものそりと

「春一番 2」 (2011.3.14)

わが海馬をくすぐりすぎる春一番 心騒げる甘きささやき

「春一番 1」 (2011.3.7)

拍子木をたたく響きが大寒の夜のしじまに冴えゆきわたる

「大寒 3」 (2011.2.19)

母つくる半纏着ればぬくぬくと凍てし心をふんわり包む

「大寒 2」 (2011.2.9)

人みなが身の竦めおる大寒に凍土を突きてチューリップの芽

「大寒 1」 (2011.1.31)

覗くたび別の世界に引き込まれ目眩むがの不思議な鏡

「元日詠  3」 (2011.1.24)

御祓いを受ければ神が宿るがに髄まで穿ち初心にかえる

「元日詠  2」 (2011.1.13)

空洞に張らるる注連縄しめやかに気の漂える欅の大樹

「元日詠  1」 (2011.1.9)

焼き芋を両手で頬張る園児らの熱さこらえる手が踊りだす

「師走寸描 3」 (2010.12.27)

落葉掃く老いの背中に小春日が戯れ射せる師走のひと日

「師走寸描 2」 (2010.12.20)

かたことと機織る音の聞こゆがの母を連れくる木枯らしの夜

「師走寸描 1」 (2010.12.14)

並べうる器に蜻蛉とまれおり我関せずと日向ぽっこす

「益子の大陶器市 3」 (2010.12.8)

店前の五メートルの大狸化かされぬぞと財布を締めり

「益子の大陶器市 2」 (2010.11.17)

陶芸の郷といわるる益子には陶工たちの気迫が満ちる

「益子の大陶器市 1」 (2010.11.08)

目を凝らし石垣に見る光苔仏の照らす光にも見ゆ

「千畳敷カール 3」 (2010.11.03)

はるなつは花の苑にて盛るるも千畳敷は草紅葉なり

「千畳敷カール 2」 (2010.10.21)

たちまちに山覆われて目の前に怒涛のごとく霧の迫りき

「千畳敷カール 1」 (2010.10.10)

久々の雨に打たれる向日葵の息づくさまに我も息づく

「猛暑 2」 (2010.9.28)

ひぐらしと鈴虫鳴ける夕べにて季の移ろいを幽かに覚ゆ

「猛暑 1」 (2010.9.14)

雷鳴の轟く窓辺に立ちおれば背を貫きて閃光はしる

「夏を拾う 4」 (2010.9.6)

野辺に咲く名もある花もなき花も賞でゆく人の穏やかに見ゆ

「夏を拾う 3」 (2010.8.24)

雑草の茂れるままの廃屋に天を仰ぎて向日葵の立つ

「夏を拾う 2」 (2010.8.9)

雷鳴の閃光はしる窓にいて悪魔の駆ける天を眺めり

「夏を拾う」 (2010.7.28)

エジプトの絵模様踊るスカーフを透き過ぎゆきぬ葉桜の風

「エジプトに馳せる 2」 (2010.7.15)

ピラミッド謎多ければ惹かれふく馳せる心は早やエジプトへ

「エジプトに馳せる 1」 (2010.6.19)

境内の池面に浮かぶ花筏鯉も見るらし筏揺らす

「初夏に感じる 2」 (2010.6.5)

親が子に譲るを倣い名付けしとゆずり葉という教えられたり

「初夏に感じる 1」 (2010.5.17)

完成は百年後とうガウディの見上げる塔に人影を見ゆ

「スペインの旅 4」 (2010.5.7)

ゴヤ描く「裸のマハ」の前に立ち去り難かりしプラド美術館

「スペインの旅 3」 (2010.5.3)

名画なるベラスケスの絵に立ちん棒駆け足で過ぐプラド美術館

「スペインの旅 2」 (2010.4.23)

スペインは世界遺産の豊庫にて古に馳す宮殿巡り

「スペインの旅 1」 (2010.4.15)

のうのうと足を投げだし野良猫の欠伸に注ぐ日射しのやわし

「しなのの春 2」 (2010.4.7)

春日浴び親子で飛ばす紙飛行機広場に高く声の広がる

「しなのの春 1」 (2010.4.7)

連翹の黄があまりにまぶしくて惑えるわれをさらに惑わす

「春の兆し 2」 (2010.3.19)

雪解けの水が川幅膨らませ目を皿にして渦巻きの過ぐ

「春の兆し 1」 (2010.3.9)

公園に遊ぶは鳩と鴉のみ自由自在に闊歩しており

「立春のころ 2」 (2010.2.19)

立春と聞けばからだが軽くなり日脚も延びて街に向かいぬ

「立春のころ 1」 (2010.2.12)

逆転の笑みのこぼるる浅田真央十九歳の貌のぞかせて

「氷上の舞 2」 (2010.1.31)

製氷のあとに滑れる一本の白き筋あとリンクに光る

「氷上の舞 1」 (2010.1.29)

おみくじが枝垂るるほど結ばれて松の緑に白き花満つ

「元日詠 2」 (2010.1.13)

除夜の鐘遠くに聞きて目覚めれば去年は今年の時を刻めり

「元日詠 1」 (2010.1.10)

華やげる花火のあとの静まりに儚さつのる靴の音聞く

「秋深く 3」 (2009.12.31)

木枯しの吹くにまかせて散る紅葉絵模様のごと地面彩る

「秋深く 2」 (2009.12.27)

夕映えの空に吸い込む童謡の声に連なる柿の木の家

「秋深く 1」 (2009.12.8)

村里のおちこち柿の実たわわ生りふるさと恋し父はは恋し

「虫歌観音 3」 (2009.11.20)

幾年も経しか目鼻の定まらぬ笑める石仏苔生しており

「虫歌観音 2」 (2009.11.12)

信州の松代出身和田英の製糸工女の歩みを覚ゆ

「虫歌観音 1」 (2009.11.6)

森林の雨を集めて十和田湖は水を湛えて奥入瀬くだる

番外編「奥入瀬渓谷 2」 (2009.11.3)

雨上り奥入瀬渓谷歩きなば不意に栃の実頭を打ちし

番外編「奥入瀬渓谷 1」 (2009.10.30)

海鳴りのうねりも聞こゆ枕辺に潮の香りに包まれて寝る

番外編「竜飛岬 2」 (2009.10.24)

函館へ連絡船で渡りたる夢多き日の青春過る

番外編「竜飛岬 1」 (2009.10.22)

世に連れてさま変わりする秋祭り花火ひととき境内賑わす

「秋祭り 2」 (2009.10.20)

肩車される幼のもみじ手が父の背中でぽんぽん跳ねる

「秋祭り 1」 (2009.10.15)

寂れたる町は一夜に膨らみて人人人に埋れ尽くされり

「風の盆 3」 (2009.10.5)

哀調を帯びる越中おわら節風に流るる声の侘しも

「風の盆 2」 (2009.10.1)

坂の町八尾は九月一日を豊作祈る風の盆とう

「風の盆 1」 (2009.9.28)

北上川白波たてて流るるを車窓にながめ花巻へ向く

番外編 北紀行「中尊寺にて 3」 (2009.9.25)

高原のすすきの原を分け入れば女人結界の石碑のありて

「秋の気配 2」 (2009.9.10)

いつの間にセミの声絶えこおろぎの音色に秋の気配漂う

「秋の気配 1」 (2009.9.8)

五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る

磨り減りし丸き石段登りつつ苔生す石に往事を偲ぶ

番外編 北紀行「中尊寺にて 2」 (2009.8.28)

五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る

うす暗き堂塔覆う松杉に霊のおるらし重き風吹く

番外編 北紀行「中尊寺にて 1」 (2009.8.26)

五十万余の魂眠る高野山 生の証を墓石が語る

「ことばなき願い」 (2009.8.19)

上弦の月くっきりと祭りの夜 鉢巻法被が奏でる平和

「しなののいのり」 (2009.8.15)

諍いなどなき世を望み散策す青葉まぶしみ平和を覚ゆ

「なつのさかり」 (2009.8.11)

一山を占めるがごとく春蝉は尽きるを知らず鳴くを競えり

「しなののなつ 3」 (2009.8.7)

太陽と月と地球の織りなせる天体シヨウに言葉を絶す

「日食に立つ」 (2009.8.2)
「しなののなつ 2」 (2009.7.23)
「しなののなつ 1」 (2009.7.16)
番外編「みちのくの旅」 (2009.7.7)
「薔薇 2」(2009.7.1)
「聖山(ひじりやま)高原」(2009.6.28)
「薔薇 1」(2009.6.22)
「五月の頃」(2009.6.14)
「沖縄」(短歌新潮賞受賞作)より(2009.6.16)
「善光寺御開帳」(2009.6.14)
■杉田小百合 sayuri sugita

長野県飯山市生まれ。児童文学、女性史を学ぶ。短歌新潮同人。著書に「なくなったきょうかしょ」(ポプラ社)、「たっちゃんのたからもの」(あすなろ書房)。

短歌めくり集「しなののうた」