第4回 「会議室に樽を」

 僕が樽を愛していることが、そろそろバレ始めているかもしれない。

 樽を自分の店に置いてから、世の中にある樽に目がいくようになった。
そう、「樽を買うなんてすごいことだ」と自惚れかけていたのだが、樽は
街中にあふれているのだ。いろいろな飲食店が、看板にしたり飾りにしたり
している。あまり気づかなかったが、樽とはそういうものだ。

 街にある樽が希少なものではないと気づいても、僕の樽への愛は冷めない。
見知らぬ道を歩き、樽を見ると、必ず近づいてしまう。そっと側面をなで、
トップにそっと、ペットボトルなどを置いてみる。

 樽の効用は、飲みの席だけではないのだ。公園のベンチや森の切り株のように、
街の中でふと立ち寄ると、心安らぐひと時を過ごせる。そう、樽は都会のオアシス
でもあるのだ。

 オフィスで。
 毎日だらだらと会議をしていないだろうか。慣習だから仕方がない?
参加者が十人近くもいて、発言する人が2人しかいない。ほかの8人は起きている
のがやっとだ。そんなことに何の意味がある。時間はもっと、楽しいことに
使おうじゃないか。

 会議室に樽を入れよう。椅子はいらない。無駄な資料を置くスペースはない。
下を向いたら樽がある。上を向いたら笑顔がある。事件は会議室で起きているん
じゃない。でも、樽ならば、事件を起こす発想を生むことができる。 

[Kyo_do tsushin] No.6 2010年6月15日発行分より

■佐谷恭 kyo paxi
佐谷恭

京都大学総合人間学部在学中の19歳のときに旅を始める(現在までの訪問国数約50カ国)。2004年、「旅と平和」をテーマにした論文で、英国ブラッドフォード大学大学院(平和学専攻)を修了。

職歴は、富士通(株)で関西の新卒採用の責任者、(株)リサイクルワンの創業期のセールスマネージャー、(株)ライブドア報道部門の立ち上げ時のリーダー。

 2007年8月9日、株式会社旅と平和 を創立。同年11月に交流する飲食店をコンセプトに東京・経堂に世界初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」をオープンさせる。2009年4月からは、樽を囲む立ち飲みスタイルの店舗内店舗「Public'S'peace」(パブリック・ス・ピース)もスタート。
現在、新しい“交流する飲食店”(用賀)と社会起業家を対象とした仕事空間提供サービス“PieceOfPeaceシェアオフィス”を準備中。

日本手食協会理事長、日本パクチー狂会会長。
著書に「ぱくぱく!パクチー」(情報センター出版局)。