ノンフィクション
第2回 「樽出現秘話 2」
「樽の円形が交流を促す」と書いた。
これはかなりの程度真実で、円という形の持つマジックともいえる。特別な
仕掛けはいらない。ただ、円形のところに来ると、人は話を始める。中心という
ある一点に向かって立つからだろうか。
だから、「Public'S'peace」という樽のあるスペースに、初めて来た人は、
最初戸惑いつつも、樽マジックで交流を体験すればいい。「なんかいろいろな人と
話ができて、オモシロカッタ!」と“偶然”の出来事を喜んでほしい。
でも、樽はそれだけの場所ではない。偶然起きた出来事を楽しむのが第一歩で、
それが偶然じゃなくて必然だと分かるのが二歩目。その体験を積み重ねるうちに、
人と話すために樽に集うようになる。
英国のパブのような空間を目指している。かつてパブは、さまざまな背景を
持った人が集い。情報交換をする場だった。その情報をまとめて紙面に落とし込んだ
のが新聞の始まりだそうだ。つまり、パブという空間はジャーナリズムの始まり
であり、情報を得るための現場だったというわけだ。
「Public'S'peace」は情報の発信源であってほしい。意欲的に生きる人は、
いつもニュースを発信している。情報発信をする人たちが、また新たな情報や
新たな切り口を求めて、樽を訪れる。そして有益な情報がそこで再生産される。
そんな場所。
一例として、樽を舞台にした、新しい読書会が始まった。「食」に関する課題
図書をそれぞれ読んだ上で、自らの体験を語っていく。同じテーマに興味を持つ人が
定期的に集まることで生まれる知恵の蓄積。これを参加者がそれぞれの血肉とする
ことから始め、やがては課題とした著書を書いた本人を動かすほどの情報発信を
していく。オーガニックやフェアトレードなど、パクチーハウスでランチとして
提供している“地球を救うカレーライス”のコンセプトとして掲げていることを
より深く理解しようということでうちのスタッフが始めたこの会は「マンデー
スパイス」と名付けられたのだが、樽で起こるさまざまなディスカッションが、
それぞれの人生のスパイスとなることを祈る。
[Kyo_do tsushin] No.5 2010年5月15日発行分より
■佐谷恭 kyo paxi
京都大学総合人間学部在学中の19歳のときに旅を始める(現在までの訪問国数約50カ国)。2004年、「旅と平和」をテーマにした論文で、英国ブラッドフォード大学大学院(平和学専攻)を修了。
職歴は、富士通(株)で関西の新卒採用の責任者、(株)リサイクルワンの創業期のセールスマネージャー、(株)ライブドア報道部門の立ち上げ時のリーダー。
2007年8月9日、株式会社旅と平和 を創立。同年11月に交流する飲食店をコンセプトに東京・経堂に世界初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」をオープンさせる。2009年4月からは、樽を囲む立ち飲みスタイルの店舗内店舗「Public'S'peace」(パブリック・ス・ピース)もスタート。
現在、新しい“交流する飲食店”(用賀)と社会起業家を対象とした仕事空間提供サービス“PieceOfPeaceシェアオフィス”を準備中。
日本手食協会理事長、日本パクチー狂会会長。
著書に「ぱくぱく!パクチー」(情報センター出版局)。

