第1回 「樽出現秘話 1」
樽を設置したのは約1年前。
パクチーハウスではオープン以来「毎日がパーティ」だとして、夜の営業時間を
“パーティタイム”と呼んでいる。騒がしく盛り上がる店内は、パーティと呼べなくもなかったが、月3回行われる立食パーティ形式の営業スタイルに比べると、交流が起こりにくいなと感じていた。
パクチーハウスが「交流する飲食店」を標榜していることを知って来る人もいる。しかし、ただのパクチー料理専門店だと思っている人の方が多いので、交流を促す仕組みが必要だと考えた。そこで思いついたのが樽。円は周りに立つ人がみな中心に向かう素晴らしい形。しかも樽はそれほど大きくないので、相手との距離感がちょうどいいのだ。
かつてより樽が好きだった。バーの前に樽が置いてあれば、席として使っているわけでなくとも、店員に頼み込んでそこで立ち飲みをした。何度も怪訝な顔をされたが、樽で飲むのは気分がいいし、道行く人に「乾杯!」と声をかけるとなお気持ち良い。だから、自分の店の中に樽を置いてみたいと思ったのだ。
そして樽は出現した。樽を購入した瞬間から届くまでの数日間、どんなにワクワクドキドキしたかは、樽を買った経験がない人には分からないかもしれない。そして、僕が店を不在にしている間に、その樽は届いた。スタッフから写真付きで「樽到着」の写メールをもらったときはどんなに悔しかったか! しかし、飲食店を開き、樽を買える立場になった自分が誇らしかった。
その大きさ、そのフォルムにいたく感激し、すぐに2個目の樽を注文した。2個目の注文の際は“慣れている”つもりでさっさと決済を済ませた。(樽は楽天市場で購入w)
2日後。
自宅で家族と寛いでいるとき、その事件は起こった。チャイむが鳴り、玄関のドアを開けると、そいつが出現した。
(なぜ樽がここに…)
樽の重量は60kg。店で見ると素敵だが、自宅で見るとデカ過ぎる。僕は宅配便の人に住所を書き間違えたことを伝え、パクチーハウスに転送してもらった。快く引き受けていただけてよかったが、有料だったら自宅で引き取ったかも知れない…。
かくして樽は出現した。そして樽は、人と人とを結び付ける強力なツールとなる。
[Kyo_do tsushin] No.4 2010年5月1日発行分より
■佐谷恭 kyo paxi
京都大学総合人間学部在学中の19歳のときに旅を始める(現在までの訪問国数約50カ国)。2004年、「旅と平和」をテーマにした論文で、英国ブラッドフォード大学大学院(平和学専攻)を修了。
職歴は、富士通(株)で関西の新卒採用の責任者、(株)リサイクルワンの創業期のセールスマネージャー、(株)ライブドア報道部門の立ち上げ時のリーダー。
2007年8月9日、株式会社旅と平和 を創立。同年11月に交流する飲食店をコンセプトに東京・経堂に世界初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」をオープンさせる。2009年4月からは、樽を囲む立ち飲みスタイルの店舗内店舗「Public'S'peace」(パブリック・ス・ピース)もスタート。
現在、新しい“交流する飲食店”(用賀)と社会起業家を対象とした仕事空間提供サービス“PieceOfPeaceシェアオフィス”を準備中。
日本手食協会理事長、日本パクチー狂会会長。
著書に「ぱくぱく!パクチー」(情報センター出版局)。

